朝日新聞 2016/03/16
朝日新聞の茨木県版に掲載されました
 

「全山登って山容の魅力描く」

 荒々しい岩肌や新緑が細い絵筆で丁寧に描かれている。日立市の宮本まさよしさん(79)は作家深田久弥の「日本百名山」を自ら登って油彩画にして公開中だ。「富士山ほど山容が知られていなくても、ぼくの絵を見て『いい山だなあ』と思ってほしい。気持ちが和むような絵にしたくて細かく描いてます」

 東京生まれで1944年に母の地元日立市に疎開。就職後は東京などでも働いたが、大半をアトリエがある河原子町で過ごした。絵は35歳ごろから始め、海や山、動物をスケッチしては自宅で油絵に仕上げた。50代から趣味を生かして山の絵に取り組んだ。百名山プームの初期で「全山を描こう」と決めた。

 だが実行は容易でなかった。登るだけなら晴天は必要ないが、悪天侯ではスケッチもできない。山の見栄えがいい場所と陽光の角度など下調べは必須だった。妻文江さん(66)が車で北海道に下見に行き、写真に記録。持ち帰って相談し、後日2人で出かけることを繰り返した。2002年に完成し、初の個展を開いた。好評で一部を市施設に常設展示する機会を得たが、2年後に自宅の火事で大半を失う。でも炎を見ながら「もう一度描き直そう」と考えた。

 焼け跡からスケツチが見つかり、すぐ描き直しに着手。資料がない九州と四国の山は文江さんとスケッチ旅行に行き、10年ごろ完成させた。
プログ http://www.net1.jway.ne.jp/fuji3180/
で公開中だ。 (川上眞)


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