50代後半になって絵のシリーズ化を考え、それまで趣味で登っていた山を対象に取り組んでみようと思い立った。ちょうど日本百名山がブームになり始めていたこともあり挑戦してみようと思ったのである。軽い気持ちで始めてはみたが、これがかなり難しい事であると後になって気づかされた。
まず天気、登山は晴れていなくても出来るが、ガスなどで山が見えなければ絵は描けない。
絵姿の良い場所を求めて右に左に、時には対峙する山に登り返したりした。しかも逆光では山肌が見えず、順光では表情が乏しく迫力が出ない。万事大変な下調べが必要となるのである。
ある時、北アルプスの稜線上で単独行のオランダ人青年と出会ったことがある。しきりに「日本の山は素晴らしい」と言う、オランダには山が無いというのだ。
私自身、日本の山はつくづく美しいと思う。しかし、その美しい自然も幾多の災害と背中合わせである事もまた事実で、今見ている景色が明日も見られるとは限らないのだ。
私も後期高齢者と言われる年齢になり、険しい山はなかなか大変になってきたが、これからもこの美しい日本の山を絵に残してゆきたいと思っている。自然に対する畏敬の念を忘れずに・・・。
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